201601/11

舌下免疫療法と花粉を吸い込まないセルフケア全知識

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舌下投与する花粉症の女性

アナタは、こんな花粉症の症状で困っていませんか?

  • 鼻づまりで眠れず、仕事中にウトウトしてしまう
  • いつも頭がボーッとして、会議などに集中できない
  • 目の周りや鼻の下が真っ赤に腫れ、人前に出るのが恥ずかしい
  • 春なのに気分がすぐれず、友人との旅行なども気が進まない
  • 肌が荒れて化粧がうまくできない、鼻をかむときファンデーションが落ちる
  • 涙でアイメイクが崩れる
  • 外出するのが億劫になり、引きこもりがちになる
  • 鼻水やくしゃみのために、クラシックコンサートなどに参加できない

花粉症は、仕事や学業にも大きな影響を与えます。2010年に発表された研究によると、花粉症を持つ社会人の80パーセント以上が、「花粉症は仕事のパフォーマンス、つまり労働生産性にマイナスの影響を及ぼしている」と答えているのです。

花粉症は仕事、勉強に影響するのか? 出典:週刊アスキー

実際、市販薬を飲むと眠くなるので、辛くても症状をがまんしながら仕事をしているという人は、多いのではないでしょうか。

花粉症によって生命に関わることはまれですが、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどのせいで、QOL(生活の質)を確実に下げてしまっているのです。もし、毎年3ヶ月も続くとしたら、発症後の人生1/4が有意義に過ごせないことになります。

アナタは、人生の4分の1を「ガマン」できますか?

「もう花粉症に耐えられない!何が何でも治したい!」というアナタに、ピッタリな治療方法があります。それが、治療効果が高く、痛みもなく、副作用も少ない最新の治療法、“舌下(ぜっか)免疫療法”なのです。

これから、『初めてでも分かる“舌下免疫療法”』をご紹介します。花粉シーズンに削られていたQOLを、取り戻していきましょう。

花粉症を根本から治す「免疫療法」

花症の症状を和らげる治療には、飲み薬や目薬、点鼻薬などがよく使われますが、これらの治療はあくまで「症状を和らげる」のであって、アレルギー体質を治すことはできません。

アレルギー体質を治すことのできる治療はあるのか?

免疫療法は、スギやハウスダストなどの原因物質(抗原)を注射して、だんだん免疫をつけていく治療です。この治療をすることで、アレルギー体質が改善していきます。

昔は免疫療法のことを、「減感作療法」ともいっていました。ちょうど、予防接種が病原性の少ないウイルスや死んだウイルスを注射して、免疫をつけるのと似ています。しかし、予防接種と違う点もあります。

予防接種は1回、あるいは数回注射をすれば、免疫がつきますが、免疫療法の場合は、数十回注射をしなければいけません。

具体的には、どのようにするのでしょうか?

まずは、アレルギーの原因物質を調べる必要があります。現在、日本の保険制度でできる免疫療法は、主にスギ、ハウスダスト(ダニ)、ブタクサの3種煩なので、それ以外のアレルギーには、残念ながらこの療法は使えません。

注射による免疫療法の主な流れ

  • 初めに原因物質が何なのかを調べ、それに合う注射を選択される。
  • 注射をする時には、まず薄い抗原を注射する。
  • 1~2週間、間を空けて、徐々に抗原の濃度を上げていく。
  • 維持量に達したら、同じ濃で注射を続けていく。
  • 2~3年間続けていくと、効果が出てくる。

(具体的な方法は施設によって異なります)。

医師が適切に診断し、免疫治療に効果がありそうな患者さんを適切に見極めて、しっかり治療を行えば、アレルギー症状をかなりの割合で改善することができます。

ある報告では、免疫療法の結果、7割の人が鼻や目の症状が楽になり、2割の人が薬なしで花粉シーズンを過ごせました。また、花粉が大量飛散した年でも、6割の人が無症状で過ごせたという報告もあります。

この免疫療法が、アレルギー反応を起こりにくくさせ、時には、全く起こらなくさせる治療であることには、間違いないでしょう。しかし、気をつけなければならない点があります。

  • 注射による免疫療法のデメリット
  • 根気よく何年も病院に通わなければならない

忙しい中で毎週毎週、病院に通うのは結構大変なので、せっかく始めても途中でやめてしまう方も少なくありません。頻繁に、定期的に通いやすく、しかも免疫療法を行っている病院やクリニックを探さなければならないのも、中々難しいのです。

頻度は高くないが注射には副作用が起こる可能性がある

注射した所が赤く大きく腫れたり、全身にじんましんが出たり、ごくまれにはアナフィラキシーショックといって、血圧が下がって危険な状態になることもあります。しかし、免疫療法を行っているアレルギーの専門医であれば、そのような副作用に対応できるので、安心してOKです。

注射は痛い

誰でも痛い治療は集ですよね。

重複(ちょうふく)抗原

例えばスギ花粉症もあり、ハウスダストのアレルギーもあり、カモガヤ花粉症もあるという人には、なかなかこの免疫療法は効果が出にくくなってしまいます。

他にも種々の問題点がありますが、そのような問題点をできるだけ解決した新たな「免疫療法」が開発されました。それが、「舌下(ぜっか)免疫療法」なのです。

新たな治療法に注目!「舌下(ぜっか)免疫療法」

先ほど述べた、免疫療法の問題点を解決した新たな免疫療法が、「舌下(ぜっか)免疫療法」です。

これは、アレルギーの原因物質であるスギやハウスダストのエキスを、注射ではなく、舌の下(舌下)に垂らして体の中にしみ込ませるというもの。注射の免疫療法と同じように、薄いものから、段々濃くすることで免疫をつけていく治療で,アレルギー症状を改善させることができるのです。

舌下免疫療法の仕組み

花粉によるアレルギー反応出典:エコチャレンジャー

舌下(ぜっか)免疫療法のメリット

  • 病院に頻繁に通わなくて済む

注射だと、必ず病院に行かないと投与できませんが、舌下なら、家でポタポタと手軽に垂らすことができるので、病院に何度も通う手間が省けます。

  • 注射のような痛みがない
  • 注射の時に起こる可能性のある、アナフィラキシーも起きにくい

すでに日本でも大規模な治験が行われており、この舌下免疫療法によって2割の人が症状がほとんどなくなり、6割の人は症状が軽くなるといわれています。

平成26年の秋には、スギの舌下免疫療法が保険適応となり、一部の病院でも治療を受けられるようになりました。ただ、決められた講習を受けたアレルギー専門の医師しか治療ができないことになっています。

スギ舌下免疫療法で注意すること

  • スギ下免疫の薬を処方できるのは、講習を受けた専門の医師に限られる
  • (受診する前に、病院に問い合わせるとよいでしょう)
  • 治療を開始するのは、スギ花粉が飛んでいないシーズンに限られる(6月~12月)
  • 治療は、少なくとも2~3年は継続しないと効果が出ない
  • 中には、治療をしても効果が出ないケースもある

治療開始は花粉の飛散時期の23ヶ月前から

さまざまな検査によって、患者の症状の原因がスギ花粉によるアレルギーが主であることがハッキリ分かり、しかも舌下免疫療法が向いているようなら、いよいよ治療の開始です。

免疫療法の一つである舌下免疫療法が、一般的な薬物治療と大きく異なるのは、症状がないときに始める治療法であるということです。従来の薬剤は「対症療法」で、薬を飲むのは症状があるときですが、舌下免疫療法は、逆にハッキリしたアレルギー症状が出ているときには治療が始められません。

なぜかというと、季節中は花粉を吸い込み続けているので、体はそれを「異物」だと感じてIgE抗体をたくさんつくっています。つまり体は、わずかなアレルゲン(抗原) が体内に入ってもアレルギー反応が起こりやすい状態になっているのです。

このときに舌下免疫療法を始めると、スギ花粉のアレルゲンを鼻だけでなく舌下からも取り込んでしまうことになり、むしろ症状が悪化してしまうのです。条件によってはアナフィラキシーショックなど、重いアレルギー反応を起こしてしまう可能性も。

スギ花粉症の患者では、1年を通じてスギ花粉に対して陽性を示しますが、その中でも、血液中のIgE抗体が低いときに治療を開始し、体のアレルゲンに対する反応性が抑えられた状態である「免疫寛容(かんよう)」をつくり出さなければなりません。

そのため、治療開始は遅くともスギ花粉症の症状が出る2~3ヶ月前

  • 1月から症状が出始める人は10~11月より前から
  • 2月から症状が出始める人は11~12月より前から

始めることになります。もちろん、花粉飛散が終了した5~6月頃から治療を開始することもできますし、「免疫寛容」もできやすくなると考えられます。

舌下免疫療法が適しているかどうか、医師は患者の体の状態、生活習慣など、さまざまな条件を考慮するので、できれば早めに医師に相談した方が良いでしょう。

薬液を舌下にたらして投与

舌下免疫療法は、スギ花粉のアレルゲンを含んだ液体の薬剤を、舌の下にたらすことで行われます。頭痛薬などのようにすぐ飲み込んで、胃や腸から吸収させるものとは違い、ロの中にしばらくおいて、舌の下の粘膜から薬が吸収されるようにするためです。

かつて、舌下の投与法についてさまざまな臨床上の検討が行われていた時期には、まず舌下に一定時間留まるように、食パンの切れ端を舌の下に置き、そこに薬液をたらすという方法が行われていました。そのため、一般の人にもパンを使う方法が知られてきましたが、現在では液剤を舌下にたらすだけで、効果が得られるように設計されています。

舌下免疫療法 薬液の使い方

毎日決められた量の薬剤を舌下にたらし、2分間はじっとそのまま保持する

この舌の下というのは、舌の下全体に含む感じですので、舌を大きく持ち上げて奥まで注ぎ込む必要はありません。こうすることで、スギ花粉のアレルゲンがジワジワと口の粘膜から吸収され、免疫細胞に取り込まれていきます。

2分間経った後は、唾液とともに薬剤を飲み込んで良いが、5分間はうがい・飲食を避ける

投与後、最低2時間は激しい運動、入浴、アルコールの摂取を避けることも大切です。また、歯科治療中やロのなかのけが、口内炎のときなどは治療を中断ずることもあります。

また、「1日のいつ薬剤を使ったらいいか?」という投与時間について、特に定められていませんが、起床時など、毎日キッチリと治療を続けられるタイミングが良いと考えられています。生活習慣などを考慮しながら、医師に相談してください。

増量のスケジュールを守ろう!

先に述べたように、舌下免疫療法では、最初は、少ない量のアレルゲンで始め、少しずつその量を増やしていくことで、体のアレルゲンに対する反応が紀こりにくいようにします。舌下免疫療法では、注射による方法と比較して安全性が高いのですが、それでも増量方法には注意が必要です。

重要なのは治療開始から2週日の「増量期」です。治療開始日と2日目は、液剤1mlあたり有効成分の濃度が200JAU(Japanese Allergy Units, 日本独自の化粉エキス濃度の単位)という薄い薬剤を、ポンプ状の容器を使って0.2 ml滴下します。そして3日目と4日目は0.4 ml、5日目は0.6 ml・・・という具合に、少しずつ量を増やしていきます。

シダトレン出典:専門医に聞く舌下免疫療法

2週目に用いるのは、1 mlあたりの有効成分の濃度2000JAUという、最初の10倍濃い薬剤です。こちらも少しずつ滴下する量を増やし、14日目には、この薬剤を1 ml滴下することになります。これで増量期は終わりです。そして2週目以降は、小さなラミネートチューブ状の容器に1 ml入った薬剤を毎日滴下します。

シダトレン舌下剤出典:トウキョウライフ

投与スケジュール

1週目 増量期 2週目 増量期 維持期
200JAU/ml 2000JAU/ml 2000JAU/ml
1日目 0.2ml 1日目 0.2ml 1回1 ml/日
2日目 0.2ml 2日目 0.2ml
3日目 0.4ml 3日目 0.4ml
4日目 0.4ml 4日目 0.4ml
5日目 0.6ml 5日目 0.6ml
6日目 0.8ml 6日目 0.8ml
7日目 1ml 7日目 1ml

こうした方法を複雑に感じる人もいるかもしれませんが、安全でより確実な効果を得るためには、この増量スケジュールをしっかり守ることが大切です。

気になる「副作用」は?

医師からは、治療中に起こり得る「副作用」「副反応」などの説明も行われます。従来の免疫療法と比較して、安全性が高いことが知られている舌下免疫療法ですが、副反応はあります。

  • 舌下免疫療法の主な副作用
  • ロの中が腫れてかゆくなる

もっとも多いのは、ロの中が腫れてかゆいという症状です。この症状は免寛容を得る過程で起こるもので、治療を続けているうちになくなることが多いと考えられていますが、症状の強さは個人差があり、2~3日でなくなる人もいれば、何週間も続く場合もあります。

ロのなかのかゆみや違和感がガマンできないときは、抗ヒスタミン薬などを使うこしで軽減できることもありますので、医師とよく相談しながら治療を続けることが%,といえます。

アナフィラキシーショック

このほかこれまでの臨床試験では報告がありませんが、アナフィラキシーショックなど重いアレルギー症状が出る可能性はゼロとはいえません。増量中に体に異変があったときは、医師にすぐ相談してください。

2年続ければ8割に効果アリ

舌下免疫療法は、花粉が飛び始めたり症状が出始めても治療を継続します。そして、花粉の飛散が終わった後でも毎日治療を継続して、少なくとも2年間しっかり治療するのが望ましいとされています。

治療の目的である、スギ花粉のアレルゲンに対する「免疫寛容(かんよう)」が完全に成立するまでには、実は2年ほどの時間がかかると考えられています。

11月に始めたとして、人によっては最初のシーズンでも症状が軽減したり、使用する治療薬の量を減らせるなど効果が得らますが、より効果が強くなるのは、次のシーズン(2シーズン目)以降です。1年目でまったく効果のなかった人でも、2年目に大幅に効果の表れる人もいるのです。

花粉の飛散量は毎年異なるため、なかなか効果を実感できないケースもあるかもしれませんが、すぐに諦めたりせず、医師とよく相談しながら、治療を続けることをおススメします。

免疫寛容がピークに達した後ほどうなるのか?

効果がほぼずっと続く人もいれば、段々効果が弱くなる場合もあります。1年目で効果があった人の、70~80%はその後も症状がかなり改善されました。そのうち、30~40%の人は症状がほとんど出なくなるまでになり、5年以上花粉症から全く解放されている人もいます。

このような治療効果の表れに差があるのは、花粉症の症状や重さに個人差が多いように、免疫寛容のシステムにも個人差が多いためだと考えられています。

スギ花粉入り健康食品に要注意!

実は、この治療に似たような健康食品が、いろいろな所で売り出されています。「スギ花粉のお茶」「スギ花粉のカプセル」「スギ花粉エキスの飴」などです、

昔から、春の山に入る山師の人たちは、長年の経験からスギ花粉症にならないように、スギを煎じて飲んでいたそう。そのようなこともあり、このような食品が作られているようです。中には効果のある物もあるのかもしれませんが、玉石混交ですので、気をつけなければなりません。

平成19年に、スギ花粉入りのカプセルを内服したあとに、テニスをして、運動誘発性のアナフィラキシーショックが起こり、一時重体となった人がいました。スギ花粉が体の中に多く入ってしまい、さらに直後に運動をしたことで、強いアレルギー反応が起きてしまったのです。

健康食品の中には、安全性がじゅうぶん確認されていない物や、効果がじゅうぶん検証されていない物もありますので、注意が必要です。

舌下免疫療法法とこれらの健乗食品とは、全く別物。舌下免疫療法は、しっかりと治験がなされており、海外ではだいぶ前から治療に備われています。何より、医師が診察をしながら、薄い物から処方するのでご安心を。

まとめ

舌下免疫療法を含め、次々と花粉症の新しい治療が登場しています。抗ヒスタミン薬などの治療薬も進歩しているので、いろいろな治療を組み合わせることで、多くの人の症状を改善できるようになりました。

しかし、昔もいまも、花粉症治療における基本中の基本は、なるべく花粉を吸い込まないような工夫、つまりセルフケアにあります。マスクなどのセルフケアが上手にできている人は、舌下免疫療法などの治療成績も大幅にアップすることができるのです。

せっかく取り組んだ舌下免疫療法の効果を、じゅうぶんに得るためにも、花粉症のセルフケアも忘れずに。


この記事のTOPに使用している画像は、 NHKスペシャル 病の起源 プロローグ「人類進化700万年の宿命」 で使われた写真を引用させて頂きました。

正しいマスクの付け方とは?出典:TAKAのMETAL Burning

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