201703/13

つわりは葉酸サプリで赤ちゃんに微量栄養素を届ける科学的理由

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つわりは、健康な赤ちゃんが育つためにからだがもたらす防衛手段

2016年9月、アメリカの医学誌「JAMAインターナショナル・メディシン」に、「妊娠時のつわりは流産リスクの低減に関連している」とする調査結果が掲載されました。昔から、つわりがひどいのは赤ちゃんが元気に育っている証拠、ともいわれますが、つわりがなぜ起こるのかはよくわかっていません。

つわりがひどいと食事がのどを通らず、おなかの赤ちゃんにきちんと栄養が届くのか心配ですよね。特に妊娠の初期には、葉酸や亜鉛などのビタミン・ミネラルは欠かせない存在です。これらの微量栄養素は普段の食事でも不足しがちなので、プレママの不安はつのるばかり。そんな、つわりと赤ちゃんの栄養についての疑問を解くカギがここにはあります。

妊娠中(つわり時)でも安心して摂取できるベルタ葉酸サプリ

妊活中や妊娠初期のプレママは、厚生労働省が推奨しているようにサプリメントから葉酸を摂取するのがベストではないでしょうか。そんなプレママ用には妊娠中でも安心して摂れるベルタ葉酸サプリとベジママがおススメです。それでは、口コミでも人気の高いこのふたつの葉酸サプリについてご説明しましょう。

ベルタ葉酸サプリ

ベルタとはイタリア語で「美しいひと」を意味する言葉ですが、ベルタ葉酸サプリに先行して発売された初のベルタ商品「ベルタ酵素」はたちまちベストセラーとなりました。ベルタ酵素の「一食置き換えダイエット」について、発売の翌年に「日本臨床試験協会」によって行われた臨床試験では、実に被験者の9割に減量効果がみられ、その平均は3カ月でなんとマイナス4.4kgだったといいます。

そんなベルタブランドから酵素につづいて発売されたのが「ベルタ葉酸サプリ」です。ベルタ葉酸サプリの商品開発とカスタマーサポートは現役ママがスタッフを務めているだけあって、お母さんの愛情がたっぷり反映された商品となっています。

ベルタに使われている葉酸は一般的なサプリメントと違い、葉酸を酵母に含有させたタイプを使用しています。こうすることで葉酸は体内で少しずつ吸収されていくので、身体の中に長時間葉酸をとどめておくことができます。

体内で長く葉酸が働けるように工夫されている

もともと、葉酸をはじめとするB群ビタミンはたくさんとっても使用されなかった分はすぐに体外へ排出されてしまいます。このため、ビタミンEやビタミンAなど体内に蓄積する脂溶性ビタミンと違って、毎日必要な分をからだに供給してあげなければなりません。

ベルタ葉酸サプリは葉酸を酵母に含有させることで、体内で長く葉酸が働けるように工夫されているのです。また、ベルタ葉酸サプリに配合されている葉酸はモノグルタミン酸型ですので、体内で分解されなくてもダイレクトに小腸から吸収され、効率のよい働きが期待できます。

また、ベルタ葉酸サプリには葉酸のほか、ビタミンB1、B2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビオチン、ナイアシン、パントテン酸まで、ビタミンB群はすべて配合されています。

ベルタ葉酸サプリには体にとって必要不可欠なミネラルが含まれています

ビタミンB1は世界で初めて発見されたビタミンで、豚肉や玄米に多く含まれています。肉を食べる習慣がなく、精白米を好んで食べていた江戸期の武士や公家にはビタミンB1欠乏症である脚気が多く発症したため、当時脚気は「江戸患い」と呼ばれるほどでした。明治期の海軍では遠洋航海中に脚気で多くの死者を出しましたが、軍隊の食事を肉中心の洋食にしたところ、脚気の発症が激減したといわれています。

最近の研究で、ビタミンB2には心臓病や白内障の予防効果が、ナイアシンには皮膚のバリア機能があることが解明され、肌荒れや乾燥肌に効果があるとされています。ビタミンB6は葉酸と共にたんぱく質の代謝に関与し、B12はDNAや核酸の合成に関与しています。そして葉酸については神経管閉鎖障害の予防以外に、口蓋裂や口唇裂、心臓や心血管の異常予防に効果があるとする報告もあります。

ベルタ葉酸サプリには、葉酸をはじめとするビタミンB群のほかにも、ミネラル含有酵母、ミネラルイーストが配合されています。こうした酵母には亜鉛、銅、セレンなど人体にとって必要不可欠なミネラルが含まれています。

亜鉛は体内に2グラムほど存在する必須ミネラルで、たんぱく質と結合して200種類以上の酵素やホルモンの材料となっています。また、たんぱく質の合成や免疫反応の調節、DNAの合成にも不可欠なミネラルです。亜鉛はさまざまな食品に含まれていますが、小腸からの吸収率が約30%と低いため、不足しやすいミネラルです。さらに、現代人は加工食品の摂取量が多いため、潜在的な亜鉛欠乏の人が多いと考えられています。

妊娠中は亜鉛の消費量が増える

妊娠中は特に亜鉛の消費量が増えるので意識的に摂取するよう心がけたいものです。妊娠中、特に14週以降の亜鉛不足は胎児の発育が悪くなり、未熟児や早産のリスクが高まるだけでなく、脳の発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。

セレン不足に要注意

銅は血液のヘモグロビンに鉄を結合させるのに必要なミネラルで、妊娠中は不足しがちなミネラルです。妊婦の貧血は胎児の中枢神経系に影響が出る可能性があります。セレンは強力な抗酸化作用を持つミネラルで、体内でもっとも強力な抗酸化物質グルタチオンペルオキシターゼの構成成分です。セレンが不足すると免疫力が低下して活性酸素による細胞の傷害が起こりやすくなります。

セレンの欠乏は男女ともに不妊症の原因となり、女性では胎児の発育遅滞、早産、流産、妊娠糖尿病などが起こりやすくなるとする報告があります。特に男性の場合、亜鉛、銅、セレンが不足すると男性機能が低下しやすいので、ベルタ葉酸サプリは女性だけでなく、ご夫婦で使用するのがおススメです。

ベルタ葉酸サプリには、このほかにも21種類の野菜成分が含まれており、ファイトケミカルを効率よく摂取できます。またツバメの巣、コラーゲン、プラセンタなど6種類の美容成分も配合されており、ママになっても美しさをキープするために役立つ点は見逃せません。

ベジママ

クチコミ人気ナンバーワンのベルタ葉酸サプリを猛追中なのが、妊活中のプレママから絶大な支持を集めている「ベジママ」です。ベジママは一般的な葉酸サプリとはひと味もふた味も違うユニークな配合が最大の特徴で、メインの成分はピニトールとルイボス、アイスプラントです。

これらの聞きなれない名前の成分にはどんな働きがあるのでしょうか。最近、若い女性に増えている排卵障害のひとつに、多のう胞性卵巣症候群という病気があります。

多のう胞性卵巣症候群の主な症状、特徴

  • 月経周期が長い(おおむね35日以上)
  • 月経不順
  • にきびや吹き出物が多い
  • 体毛が濃い
  • ぽっちゃり体系

などがあります。

ですが、これらすべての症状が現れるとは限らず、単なる月経不順と思われて見過ごされがちなのがこの病気の怖いところです。多のう胞性卵巣症候群は、排卵から月経までのあいだ分泌量が増えて高値になる「黄体ホルモン」と、血液中の糖を組織に取り込んで血糖値を下げるためのホルモン「インスリン」が通常より卵巣に強く働いて、局所的に男性ホルモンが多量に分泌されることで起こります。

超音波診断装置でエコー検査をすると、卵巣に10mmくらいの卵胞がたくさんできて、1列に並ぶネックレス・サインという現象が起こります。通常はいくつもある卵胞の中からひとつだけが選択的に大きくなり排卵されますが、この病気ではみんな同じような大きさのためになかなか排卵されません。

糖尿病の薬であるメトフォルミンが排卵障害を改善することがわかってきました出典:聖マリアンナ医科大学病院 生殖医療センター

多のう胞性卵巣症候群は年齢を重ねるごとに進行し、月経周期がどんどん長くなる傾向にあります。しかし、まだ若い20代の内は病気に気づかない人も多くいるため、受診されず治療や検査に至らないケースが少なくありません。

この病気での不妊治療には排卵誘発剤を使用しますが、効果の程度によってはステロイド剤や漢方薬を併用します。重症の場合には排卵誘発剤を注射したり、腹腔鏡化による手術で卵巣に穴をあける治療を施しますが、注射の場合は過剰反応が起こる可能性があり、手術の効果は1年ほどしか続かない弱点があります。

インスリンが過剰で多のう胞性卵巣症候群が起こっている場合には、血糖値を下げる糖尿病の薬が用いられることもあります。筋肉組織や脂肪組織の細胞には、血液中の糖と結合して細胞の中に取り込むグルコーストランスポーター(GLUT4)という輸送体があります。

食事などから摂取した糖が血液中に移行してくるとすい臓からインスリンが放出され、小松美羽インスリンが細胞膜にあるインスリン受容体に結合すると、細胞の中に貯蔵されているGLUT4が細胞膜の表面に移動して糖をキャッチ、細胞内に運び込みます。

インスリンは血糖値の上昇を感知した膵臓から分泌されると血流に乗って骨格筋に運ばれます出典:首都大学東京 運動分子生物学研究室

すい臓への負担は?

2型糖尿病では細胞膜にあるインスリン受容体がインスリンに反応しにくくなることで、血液中に糖があふれ、あふれた糖を回収しようとすい臓からはさらにインスリンが分泌されます。この状態が何年、何十年と続くと、やがてすい臓は疲れ果ててインスリンを分泌できなくなります。

メトホルミンは、インスリンに結合するインスリン受容体の感受性を高めるとともに、GLUT4にも作用して血液中の糖の取り込みを促進します。この結果、血糖値は下がり、必要となるインスリンの量も少なくなるのです。

インスリン分泌機構とインスリン分泌刺激薬出典:星薬科大学オープンリサーチセンター

ベジママの主成分であるピニトール

ベジママの主成分であるピニトールという成分は玄米などに含まれるイノシトールの一種で、マメ科の植物に含まれています。イノシトールは脂肪肝の予防や神経の機能を正常に保つ働きがありますが、ピニトールが体内で代謝されるとカイロイノシトールとなり、GLUT4に直接作用するようになります。

耐糖能障害及び糖尿人の体内に不足するカイロイノシトールを補う出典:株式会社ヘルシーナビ

ミオイノシトールを投与後排卵の増加が認められた報告

カイロイノシトールやミオイノシトールなどのイノシトール類は体内でブドウ糖から合成されますが、多のう胞性卵巣症候群の患者ではイノシトールの合成能が低下しているためか、カイロシトールをはじめとするイノシトールの欠乏がみられます。

これらの患者にカイロイノシトールやミオイノシトールを投与したところ、インスリンの効きが良くなり、男性ホルモンの値が低下、排卵の増加が認められたとする臨床試験の報告があります。しかし、天然のカイロイノシトールはソバ以外の植物からはほとんど発見されていません。

また、ミオイノシトールは食品ではレシチン(大豆などに含まれるリン脂質)とフィチン酸(玄米など穀類に含まれるリン酸)に含まれていますが、フィチン酸は人間の消化管では消化できないため、体内でイノシトールとして働くことができません。

ピニトールとは?

ベジママに配合されているピニトールはカイロイノシトールに-CH3(メチル基)という分子体が結合したもので、この-CH3外れると(脱メチル化)カイロイノシトールとして働きます。ピニトールはヒトの体内で容易に脱メチル化し、カイロイノシトールに変身するのです。

ピニトールは乾燥した気候の土地で育つ植物に多く含まれており、大豆やルイボス、アイスプラントなどから見つかっています。また、イナゴマメのさやにも多く含まれているので、イナゴマメのさやを原料としたサプリメントも作られています。

ピニトールを含む植物「ルイボス」は、南アフリカの喜望峰に近いセダルバーグ山脈という寒暖差の激しい乾燥地帯でしか自生しない貴重な植物です。ルイボスの葉を発酵・乾燥させたお茶はあざやかな赤色で、ルイボスの学名「アスパラサス・リネアリス(赤い木)」の由来となっています。

渋みがなくカフェインを含まないルイボスのお茶は日本でも「ルイボスティー」の名で人気があり、健康茶としてドラッグストアやスーパーなどで見かけるようになりました。最近では発酵させないグリーンルイボスティーにルイボス特有のポリフェノールが含まれているとして注目を集めています。

ルイボスティーは抗酸化作用が強い

ルイボスティーにはフラボノイド類などのポリフェノールが多く含まれており、抗酸化作用が強く、現地では「不老長寿のお茶」とも呼ばれています。ルイボスティーにはさまざまな健康効果があるといわれていますが、試験管内の実験ではプリン体が尿酸に変換されるのを妨げて、痛風の予防に効果があるとされています。

また、ルイボスにはアトピー性皮膚炎に対する効果もあるとされており、ルイボス葉の抽出物によるアトピー患者の症状改善や、ルイボスティーを入浴に使用したところ皮膚炎などの皮膚症状が緩和されたとする報告もあります。ほかにも美肌や動脈硬化予防、そしてもちろん糖尿病の予防にも効果があるといわれています。

ベジママを製造販売会社は関西鉄工株式会社

ベジママの主成分であるピニトールは、メーカーの施設で自社生産されたアイスプラントが使用されているということですが、ベジママを製造販売しているのはなんと関西鉄工株式会社という鉄鋼メーカーなのです。関西鉄工は大正12年に大阪で創立された老舗の鉄鋼メーカーで、一般には「金網」として知られるエキスパンドメタルで国内トップの実績を誇ります。

そんな関西鉄工がなぜサプリメントの製造販売をしているのでしょうか?そのきっかけは関西鉄工が新規事業として立ち上げた植物工場でした。植物工場とは、畑ではなくビルなどの閉鎖された空間で温度や光量などの栽培工程がすべて人工的に制御された、まさに野菜の工場です。

植物工場には人工光型植物工場と太陽光型植物工場があります出典:日本植物工場産業協会

植物工場は露地物栽培と違い、天候や気象に左右されることもなく、害虫・害獣による被害を受けることもないため、安定して収穫ができるとしてかなり古くから取り組まれてきました。近年、日本で植物工場が急増したのは、2009年に当時の農林水産省と経済産業省が総額150億円の補助金を拠出して建設を促進したことがきっかけです。

関西鉄工でも植物工場ブームに乗って新規事業に参入したものと思われますが、植物工場で栽培できる野菜の種類には限りがあり、その多くはレタス、バジル、サラダ菜などの葉物野菜です。農薬を使わないので安全で衛生的、という長所はありますが、一般の露地栽培と違って製造コストがかさむため、商品の単価も露地物より割高になりがちです。

事実、植物工場に参入した多くの鉄工会社や電機メーカーが撤退を余儀なくされたり、倒産の憂き目にあったりしています。最近では福島県にある富士通の半導体工場が植物工場に衣替えをして話題になりましたが、単なるレタスではなく植物工場ならではの「低カリウムで腎臓病患者でも安心して食べられる」ことをアピールポイントにしています。

アイスプラント

関西鉄工でもいろいろな野菜で試行錯誤を繰り返しましたが、「健康に寄与する」という点に着目して調査をしたようです。その結果たどりついたのが「アイスプラント」でした。

新野菜アイスプラントは南アフリカ原産の植物で国内では佐賀県で初めて栽培された野菜です

アイスプラントは葉の表面にある大きな細胞の粒が、遠目にはまるで凍っているかのように見えるためこの名がつきました。このキラキラ光るつぶつぶには地中から吸い上げた塩分が貯められています。

普通の植物は塩分濃度の高い水では育つことができませんが、アイスプラントは吸い上げた塩分を葉の表面に隔離することで海水並みの塩分濃度でも生育することが可能です。葉はサラダなどで食べることができますが、葉自体に味はなく塩分を含んだ表面の粒の塩味とプチプチした不思議な食感が特徴の野菜です。

アイスプラントは、土で栽培すると土中のミネラルだけでなくカドミウムなどの重金属も吸い上げて、一般の野菜以上に有害物質を蓄積してしまう性質をもちます。しかし、植物工場で完全に制御された栽培なら重金属の心配もなく、逆に塩以外のミネラル分を豊富に含ませることも可能です。まさに植物工場のうってつけの野菜ですね。

アイスプラントは塩や乾燥などのストレスを与えると、自分を守るためにピニトールやアミノ酸のプロリンの合成が盛んになります。プロリンはたんぱく質を構成するアミノ酸で、コラーゲンの合成を促進したり、肌の角質から水分が蒸発するのを防ぐ保湿作用があるといわれています。

関西鉄工のアイスプラントは、半導体の工場と同じくらいレベルの高いクリーンルームで栽培されているため、害虫やカビ、細菌などによる害がなく農薬を必要としません。また、光量、温度、湿度なども24時間最適化されており、ピニトールの合成に最も適した環境が保たれています。

安全で高品質の野菜を栽培し、無農薬で安心安全な植物から製品が生まれます出典:関西鉄工 ベジストーリー

ほかにもベジママには、ビタミンCとビタミンEがたっぷり配合されており、ルイボスの抗酸化作用をさらに高めています。

血糖値が高いと細胞や組織のたんぱく質に糖が結合して「糖化」が起こりやすくなりますが、「糖化」した組織は酸化されやすく細胞は酸化傷害を受けやすくなります。ベジママに配合されたルイボス、ビタミンC、ビタミンEによって、はこの糖化を防ぐ「抗糖化」が期待できるというわけです。だから血糖値が気になるパパにもベジママはおススメです。

つわりが起こる理由

つわりがひどく、我慢しきれすに嘔吐する妊婦

昔からつわりがひどいと元気な赤ちゃんが生まれる、といわれてきました。これは洋の東西を問わず経験則から生まれた言い伝えで、つい最近まで医学的に検証されたことはあまりなかったようです。それが、2014年に発表されたメタ解析の結果によって、ようやく裏付けられました。

メタ解析とは、複数の研究結果や論文を集めて統計データを作成、解析したもので、「根拠に基づく医療(エビデンス・ベース・メディシン)」において最も信頼性の高い手法といわれています。この、つわりに関する解析結果は2014年の「リプロダクティブ・トキシコロジー(生殖毒性学)」という医学誌に掲載されました。

つわりはヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが増えることが原因

この結果によれば、つわりは胎盤から放出される「ヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンが増えることによる影響で起こる、と考えられていますが、研究では、hCGと「まだ特定されていない他のホルモン」の分泌量が増えることで胎児の生育によい影響を与える可能性があるとしています。

今回の調査は1992~2012年までの20年間に5カ国で行われた10の試験で得られた結果を解析しました。その結果、つわりのない妊婦の流産率は、つわりのある妊婦の3倍以上に達し、なかでも35歳以上の高齢出産妊婦はつわりによる流産率低下の恩恵が大きい、としています。

また、早産率はつわりのある妊婦が6.4%、つわりのない妊婦は9.5%、出生異常率はつわりのない妊婦に対してつわりのある妊婦は30~80%低減したといいます。さらにこのとき生まれた赤ちゃんを追跡調査した結果では、つわりを経験したお母さんから生まれた子供たちは知能指数や言語テスト、行動に関するテストで高得点をマークしたといいます。

嘔気や嘔吐などの症状のある妊婦は、症状のない妊婦と比べ流産の確率が低い出典:ウォールストリートジャーナル

流産率を下げるメカニズムはまだ解明されていません

これ以外にも、アメリカの国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)の研究者によると、つわりは流産のリスクを50~75%も低減させたとしています。しかし、なぜつわりが胎児の健全な発育を促し、流産率を下げるのか、そのメカニズムはよくわかっていません。食事由来の有害物質が胎児に与えるリスクが低減されるため、と考える研究者や、血液中のインスリン濃度が下がることで胎盤の成長を促すことを示す研究結果もあるようです。AFPニュース

妊娠のしくみと受精卵

女性がその母親の胎内にいるときに作られた「原始卵胞」という卵子のもとが成熟して排卵され、卵管を移動中に精子と出会って受精し、受精卵が分裂を続けながら子宮へ移動、黄体ホルモンによって厚くなった子宮内膜に着床する ― これが妊娠のスタートです。

女性の排卵期が近づくと、子宮の入り口には精子が通り抜けやすいように頸管粘液が満たされます。腟内に射精された精子は、この頸管から子宮内に泳ぎ、卵管を通って卵管膨大部に達しいくのです

受精卵は細胞分裂をしながら、卵管の中を子宮に向かって移動していく時期までに子宮は、受精卵が着床しやすいようにベッドメーキングを始めま出典:日本生殖医学会

卵子が受精して受精卵となったあと、2日目には2~4細胞に分裂し、3日目には受精卵は8細胞となります。そして5日目には胚盤胞となって、赤ちゃんのベッドとなる子宮内膜にくっつきます。すると胚盤胞は膜が破れて内側にある細胞が飛び出して孵化します。

採卵から胚、胚盤胞移植までの流れは、媒精の14~18時間後に卵子を顕微鏡下に観察して、正常な受精が成立した2前核胚を選んで異常な受精をした胚を淘汰します出典:銀座レディースクリニック

妊娠8週未満までを胎芽、以降は胎児

妊娠は受精から妊娠8週未満までを「胎芽」と呼び、胎児とよばれるようになるのは妊娠8週目以降です。孵化した卵は10日ほどで羊膜に包まれて生命の進化過程を追体験していくことになります。着床の過程が完了すると、卵は次第に3つに分かれ始めます。これがだいたい16日ごろで、3つにわかれた外側の外胚葉が脳や脊髄などの中枢神経系に、中胚葉は骨や筋肉、生殖器へと、そして内胚葉は消化管や呼吸のための気道へと発達していきます。

このころになると心臓や血管が形成され始め、20日目ごろには心臓が拍動し血液を血管に送り始めます。そして、受精から8週間、妊娠10週目ごろになると臓器の原型がほぼ完成します。この時期は器官形成期と呼ばれ、赤ちゃんの奇形のほとんどはこの時期に起こります。なぜなら、胎芽は医薬品や有害物質、ウイルス、放射線などの影響を受けやすく、傷つきやすいからです。

妊娠週数における胎芽の特徴

妊娠週数における胎芽の特徴の表出典:Dear Mom

つわりが流産のリスクを下げる

このことが、妊娠初期のつわりが流産のリスクを下げ、胎児の健全な発育に寄与するためのものである、とする説を支持する理由となっているようですが、実はほかの動物にはなくヒトにだけ特異的に起こる変化があるのです。

卵が孵化したあとの胚盤胞は羊膜と胎盤にわかれて発達し、胎盤からは絨毛(じゅうもう、細かい毛のような突起)が母体側の子宮内膜に入り込んで融合しています。胎盤は胎児に酸素や栄養を送り込んだり、老廃物を回収したりする交換場所です。

胎盤は妊娠20週ほどで完成しますが、妊娠初期の胎盤の発達に異常があると流産や胎児の発育不全の原因となることが知られています。ですが、不思議なことに胎盤が形成される初期の段階で絨毛細胞が低栄養状態になると、胎盤の細胞はより深く母体に入り込み成長するのです。

富山大学の研究によれば、胎盤の絨毛細胞に栄養が不足するとオートファジーという現象が促進され、絨毛細胞が子宮内膜により深く浸潤することが確認されたとしています。つまり、つわりによって子宮内膜に栄養が不足すると、絨毛細胞がより深く入り込んで胎盤の発達を促進すると考えられるのです。

もともとヒトの絨毛細胞は他の動物よりも深く内膜に入り込むことが知られていましたが、このオートファジーによる絨毛細胞の活性化とそれに伴う胎盤の発達は、ヒトに特異的に見られる現象なのだそうです。

オートファジーとは、細胞内にある小器官を分解してアミノ酸を作り出し、それをたんぱく質として再利用する細胞の仕組みで、東京工業大学の大隅栄誉教授がノーベル賞を受賞した研究として、一躍有名になった生体メカニズムです。オートファジーは細胞の老化やさまざまな疾患に関与しているとされ、高齢出産での流産リスクにも関与しているといわれています。

オートファジーの仕組み

オートファジーは細胞内の小器官を分解し、アミノ酸として再利用する仕組みですが、そもそも細胞の中はどうなっているのでしょうか?

細胞内には細胞小器官とよばれるいくつかの役割をもった区画があります出典:日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ

  1. 核…遺伝情報が書き込まれたDNAが入っています。核が分裂するときにはDNAが凝縮して染色体となります。
  2. 細胞質…水分や塩分、たんぱく質などの大小さまざまな分子がゲル状に集まったもの。
  3. 細胞小器官…その他のミトコンドリアやリボソーム、小胞体、ゴルジ体などは細胞小器官と呼ばれ、エネルギーの産生、遺伝情報の複製や栄養の運搬、分解などの役割を持ちます。リソソームはたんぱく質を分解する働きがあり、単細胞生物では消化器官の役割を果たしています。

これら細胞小器官の働きが悪くなると細胞全体の機能が低下して、分裂の際にエラーを起こしやくなります。細胞小器官は細胞分裂の際にはいったんばらばらになり、分裂後に改めて小器官のかたちに戻りますが、質の悪い状態のまま分裂すると機能不全を起こしやすくなります。なので、細胞内に働きの悪い小器官や異常なたんぱく質が増えるとオートファジーが起こり、これらの小器官やたんぱく質を分解してアミノ酸としてリサイクルするのです。

オートファジーが起こる原因

オートファジーの仕組みは、細胞の中に異常たんぱくが増えたり栄養素としてのアミノ酸が不足すると、まず始めにオートファゴソームという膜ができて、小器官や異常たんぱくを包み込みます。そこにリソソームがやってきて融合すると、リソソームが持つたんぱく質分解酵素によって、取り込まれた小器官はアミノ酸に分解され、再利用されるのです。

オートファゴソームは中心体近くに集積しているリソソームと融合するために微小管に沿って輸送されます出典:京都大学 大学院医学研究科

オートファジーに関しては、胎児や新生児に与える影響についても以前から研究されており、2004年には生まれたばかりの新生児がオートファジーによって、自分自身に栄養を与えているとする研究成果が東京大学大学院の医学研究科・水島教授により発表されています。

卵子ににしのびよる老化現象

子宮内膜に着床した受精卵は胎芽となり、8週目以降は胎児として成長していくわけですが、実は受精する以前の卵子には質の良し悪しがあり、それが流産のリスクや染色体異常に関連しているといわれています。

卵祖細胞の増殖の数の増減

卵子は女性がまだ母親の胎内にいるうちに、そのもととなる卵祖細胞がつくられます。卵祖細胞の増殖は妊娠20週目ごろピークに達し、その数は700万個にも上りますが、その後は変性と吸収によって淘汰されていき、出生するころにはおよそ200万個まで減ってしまいます。卵祖細胞は新生児として誕生した後も減り続け、初経を迎えて妊娠が可能になるころには30万個ほどになってしまいます。

排卵する卵子の年齢は実年齢とほぼ同じになります。37歳頃を過ぎると急速に減少し、卵母細胞の数が約1,000個以下になると閉経します出典:日本生殖医学会

初経を迎えた後は周期的に月経を迎えることになるわけですが、月経は卵巣内の卵子のもととなる原始卵胞が約1年かけて発達し、発達した多くの卵胞の中からたったひとつだけが卵子となって排卵され、しかし受精せずにはがれ落ちた子宮内膜と共に体外に排出される現象です。

閉経を迎えるまで卵胞は減り続ける

卵胞が卵子になる前段階まで成長するのに約375日、月経回数にして13回が費やされます。そして、この間に卵子になれず死んでいく卵胞は約1万個…こうして年を重ねるごとに卵胞は減り続け、50歳前後にはゼロとなり閉経を迎えることになります。

卵は胎児のころにつくられ、出生から思春期までの十数年間を休眠状態で過ごします。そして排卵に向けて再び分裂を始めるのですが、排卵に向けて待機している卵はその間にどんどん年をとります。その人の年齢が15歳なら卵も15歳、45歳なら卵も45歳になっているのです。

待機している数十年の間に卵は歳をとるだけでなく、人体同様さまざまな影響を受け続けています。医薬品や化学物質だったり、有害な紫外線や自然放射線だったり。あるいは精神的なストレスによる内分泌ホルモンの影響だったりします。こうした要因によって酸化ストレスを受けるたびに、細胞は傷んだ部分を修復しているのです。

卵子となる卵母細胞は排卵直前に目覚め、減数分裂と呼ばれる分裂を開始します。通常の細胞分裂では一つの細胞が同じ2個の細胞に分かれますが、減数分裂では父親由来の染色体と母親由来の染色体を別々の組み合わせで4個に分けるのです。こうすることで子孫に多様性を持たせ、生存競争を勝ち抜いていく適応力を備えるのです。

体細胞分裂と減数分裂(成熟分裂)の相違点出典:ある産婦人科医のひとりごと

 

減数分裂の意義のモデル図出典:東京大学 生命科学構造センター

1個の卵子の貴重さ

卵母細胞は胎児のころにおよそ700万個がつくられるといわれていますが、最終的に卵子となって排卵されるのはわずか300~400個のみです。1個の卵子がいかに貴重なものかがよくわかりますね。卵母細胞は生まれたときに1回目の減数分裂を開始しますが、そこで十数年の長い眠りにつきます。

排卵直前になると卵母細胞は目覚めて1回目の分裂を完了させ、2個の細胞体になりますが、卵子になれるのは片方の細胞だけです。そして排卵がはじまるときに2回目の分裂が始まりますが、2回目の分裂も一時中断します。その後、精子が卵子に入り込むことで分裂は再開し、最後に残った1個だけが受精卵として子宮へと向かうのです。

お母さんのおなかの中に女の子がいる時期に、赤ちゃんの卵巣の中で作られた未熟な生殖細胞(卵祖細胞)が細胞分裂を繰り返し生まれる前に既に一次卵母細胞を形成しています出典:産婦人科の基礎知識

卵が1回目の減数分裂を行うとき、もととなる卵母細胞から細胞内の小器官やたんぱく質、遺伝情報の断片などが分裂した細胞に持ち込まれますが、このとき持ち込まれた異常のあるたんぱく質や不要な小器官はきれいに掃除しなければなりません。

また、受精を引き金として2度目の減数分裂が成立しますが、受精卵が着床するまでのあいだに卵母細胞由来のたんぱく質を胎芽のたんぱく質に作り替える必要があります。いずれの場合にもオートファジーによる分解と再生が欠かせません。

受精後2細胞期胚頃より母親由来のタンパク質の分解が開始し、胚ゲノムに由来するタンパク質に入れ替わります

出典:東京大学 水島研究室

オートファジーは新しい不妊治療の方法として研究されていますが、現在のところ、薬剤によるオートファジーの誘導は細胞毒性が現れたるめに困難とされています。一方で、高脂肪食や高カロリー食を続けると細胞に脂肪滴や不要たんぱくが大量に蓄積されること、そして老化によってオートファジーが起こりにくくなることなどが分かっています。

低カロリー、低脂肪食は細胞内の脂肪滴や不要たんぱくを少なくしてくれます。また、空腹はオートファジーを活性化し、サーチュインという長寿遺伝子を呼び覚まして細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを活性化します。普段から小食・空腹を実践していれば、つわりも起こりにくくなるかもしれませんね。

参考:不妊への新たな治療戦略としてのオートファジーによる卵子の品質改善に関する研究

卵の若返りが不妊治療のカギとなる!?

オートファジーにも深くかかわる、空腹感が細胞に与えるもうひとつの影響、それが長寿遺伝子と呼ばれるサーチュインの発動です。サーチュインとは細胞分裂にかかわる重要な酵素たんぱくで、現在までに7種類のサーチュインたんぱくが確認されています。

サーチュイン遺伝子はミトコンドリアの働きを高める

この酵素たんぱくを作り出すのがサーチュイン遺伝子でですが、普段は眠りについたままで働いていません。ところが、細胞に栄養が不足して飢餓状態になるとサーチュイン遺伝子は目覚め、たんぱくを誘導して細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアの働きを高めるのです。

そもそも細胞の老化とは、活性酸素によって傷害を受けた、ミトコンドリアをはじめとする細胞内の小器官が機能不全に陥り、細胞が正しく働かない、正常に分裂できない状態です。これまでは細胞核の中にあるDNAが傷つくことで細胞は老化すると考えられてきましたが、サーチュイン研究の第一人者であるハーバード大学のデビッド・シンクレア教授は別の見方をしています。

シンクレア教授によると、DNAが傷ついて正しい細胞の複製ができなくなるのではなく、DNAに書かれている設計図が正しく読みだせなくなるために、細胞の複製にエラーが起こるのだといいます。DNAは肉体の設計図ですが、常にすべての遺伝情報が使用されているわけではありません。

シンクレア教授参考:デビッド・シンクレア(David Sinclair)ハーバード大学医学部教授(写真:NHK)

DNAには本に換算すると、およそ3万冊以上もの遺伝情報が書き込まれていますが、設計図を読みだす遺伝子を発現させるスイッチは、必要に応じてONになったりOFFにされたりしているのです。サーチュイン遺伝子も例外ではなく、普段はOFFの状態のままです。

DNAは、はしごをひねったような形をしていて、核の中の染色体の中に折りたたまれて入っています。DNAは、私たちの体を作る設計図です出典:中外製薬

サーチュイン遺伝子のスイッチを入れるには

金沢医科大学の糖尿病内分泌内科学の古家教授によれば、1日の摂取カロリーを25%減らすと約3週間でサーチュイン遺伝子のスイッチがONになるといいます。30代から60代の男性による実験では、カロリー制限3週間でサーチュインの量は最大4.6倍、7週間後には最大で10倍に増えたとしています。

アメリカのウィスコンシン大学で76頭のアカゲザルを対象にカロリー制限の実験を行った結果、同じ27歳のサルなのにカロリー制限をしてきたサルは、カロリー制限を受けなかったサルに比べて外見の若さがまるで異なるとしています。

76頭のサルたちはすべて27歳以上ですが、20年間に渡って30%のカロリー制限を受けたサルは外見の若々しさだけでなく、死亡率にも大きな差がついたそうです。カロリー制限を受けなかったサルは38頭のうち14頭が死亡しましたが、カロリー制限を受けた38頭で死亡したのは5頭のみだったと報告されています。

20年間食事コントロールをされたアカゲサルのカロリー制限なしとカロリー制限ありの比較出典:カラパイア

老化を逆行させDNAに修正を加える研究行われている

デビッドシン・クレア博士は、サーチュインの新たな研究として老化を遅らせる薬の開発に取り組んでいますが、さらに一歩踏み込んだ「老化を逆行させる」研究もしています。女性の「卵巣幹細胞」を培養して若返らせ質の良い卵子を作り出す、あるいは、体外受精の際に精子と一緒に若返らせたミトコンドリアを注入する、というような方法です。

さらには、直接DNAに修正を加えることで疾患ゼロの受精卵を作り出すことも可能だとしています。シンクレア博士の研究はまるでSF小説か映画のようですが、本人によれば近い将来、若返りは現実のものになるとしています。

サーチュインにはSirt1からSirt7まで7種類が確認されていますが、それぞれ働く部位や機能が少しずつ異なります。卵子が排卵されて受精し、胚として分割を開始したあと数百個(胚盤胞)になるまでは、卵子由来のサーチュインが7種類すべて働いていますが、これらのサーチュインの働きを阻害すると受精卵は細胞の分割が遅くなり止まってしまいます。

受精卵の細胞分裂を邪魔する活性酸素

サーチュインを停止させた受精卵には、ミトコンドリアがエネルギーを作り出すときの副産物である活性酸素が充満しているところから、受精卵の細胞分裂を邪魔しているのは、この活性酸素であると考えられます。

日本老年医学会の学会誌に発表された研究報告によると7種類あるサーチュインのうち、Sirt1の遺伝子を人工的に欠損させたマウスはオートファジーが起こりにくくなり、異常なたんぱく質が細胞内に蓄積するとあります。

つまり、

サーチュインが働かない→活性酸素が増える→異常なたんぱくも増える→でも、オートファジーが起こらない→受精卵の分化停止

というサイクルが起こるものと思われます。どうやら、卵子は受精して胚盤胞になるまで、お母さん由来のサーチュインに守られているといえるようです。

卵胞が元気な卵子になるため、受精卵が胚盤胞となって正常に着床するため、着床後胎盤が発達して胎芽から胎児へと正常な発育をするため、サーチュインとオートファジーは欠かせない重要な機構として働いているのです。

そして、サーチュインを発動させてオートファジーを働かせるためには、カロリーが欠乏した飢餓状態を作り出す必要があるのです。赤ちゃんを宿したお母さんの身体は、つわりによって飢餓状態を作り出し、おなかの中に芽生えた命を守っているのかもしれません。

つわり時の間違いだらけのダイエット(飢餓状態)

つわりが正常な妊娠の維持と胎児の発育に必要なシステムだとして、ほかにも胎児の発達には必要な条件があります。それがビタミンやミネラルなどの微量栄養素の摂取です。

カロリーを制限は栄養不足の元になる

サーチュインやオートファジーを発動するには、脂質、糖質、たんぱく質というカロリーとなる三大栄養素を制限する必要がありますが、私たちは栄養素を単体で摂っているわけではなく、肉や野菜などの食べ物として摂取しています。カロリーを制限するために食事の量を減らせば、ビタミンやミネラルといった微量栄養素まで不足してしまう可能性があります。

特に、妊娠前から妊娠中に渡って必要不可欠なのが葉酸です。葉酸はたんぱく質のもととなるアミノ酸や、DNAの素材である核酸を合成するときに欠かせないビタミンで、細胞分裂が活発に行われる部位で欠乏症が起こりやすい微量栄養素です。アミノ酸やDNAを合成するときに必要な分子の一部を、他の分子から受け取って引き渡す仲介役を果たしています。

食品中の葉酸は体内での利用効率が低い

葉酸はホウレンソウから発見されたので「葉」の「酸」という名前を持ちますが、実際にはホウレンソウなどの野菜以外にも鶏や牛、豚などのレバーや、うなぎ、ウニなどにも多く含まれています。しかし、食品の中に含まれる葉酸は「ポリグルタミン酸」という大きな分子のもので、胃や腸で消化されてより小さな「モノグルタミン酸」になってから吸収されます。

厚生労働省ではサプリメントでの摂取を勧めている

このため、食品中の葉酸は体内での利用効率が低く、日本人の食事摂取基準では食品中の葉酸の生体利用率を50%としています。厚生労働省では妊娠可能な女性に対して、1日に400μgの葉酸摂取を勧めていますが、これは「モノグルタミン酸」換算ですので、食事由来の葉酸は倍の800μgを摂らなければなりません。

また、葉酸は光や熱に弱く水に溶けだしやすい性質を持っていますので、葉酸を豊富に含む食品でも調理中にその多くが失われてしまいます。動物のレバーには葉酸が多く含まれていますが、レバーにはビタミンAも多く含まれるため、妊娠中は過剰摂取を避けなければなりません。従って、食事由来の葉酸は不足しがちなため、厚生労働省ではサプリメントでの摂取を勧めています。

葉酸の欠乏は、胎児では神経の成長を阻害して二分脊椎などの神経管閉鎖障害を引き起こし、成人では巨赤芽球貧血と呼ばれる悪性貧血の原因となります。また、細胞内でのアミノ酸代謝を低下させるため、がんの原因にもなると考えられています。

一方で葉酸はDNAの合成に不可欠なため、がんの増殖を防ぐために葉酸の働きを阻害する抗がん剤もあります。なお、細胞内のアミノ酸代謝には葉酸のほか、ビタミンB6、ビタミンB12などのB群ビタミンが協調して働いているので、葉酸だけでなく他のB群ビタミンも不足しないように補う必要があります。

細胞の分裂はDNAの複製によって起こりますが、葉酸はDNAに必要不可欠なアミノ酸の合成に関与しているので、細胞増殖が活発な妊娠初期に葉酸が不足するとDNAの合成がうまくいきません。葉酸の不足は細胞の増殖を妨げ、胎児に神経管閉鎖障害を引き起こす原因となるのです。

神経管閉鎖障害とは

受精卵が分裂を開始したあと、次第に臓器が形成されていきますが、妊娠8週目までを胎芽期と呼び、このころまでに主要な臓器は完成します。この妊娠の初期に神経管(のちの脊椎)も形成されるのですが、葉酸不足は神経管の形成不全を起こし二分脊椎や無脳症といった神経管閉鎖障害を引き起こすのです。

葉酸不足での神経管閉鎖障害発症率5.12%

日本での神経管閉鎖障害はそのほとんどが二分脊椎で、発症率は出生1万人に対して5.12(1999~2003年)とされています。初期の胎芽に形成される神経管は、最初に中央部分が閉じられて上下に向けて管がかたちづくられていきます。この神経管の形成期に不完全な箇所が残ったのが二分脊椎で、脊髄や神経が皮膚の外に露出してのう胞を形成したものをのう胞性二分脊椎、外部に露出していないものを潜在性二分脊椎といいます。

二分脊椎は葉酸不足によっておこりますが、ほかにも医薬品やビタミンAの過剰摂取などが原因となることがあります。二分脊椎によって脊髄液の循環が阻害されると、脳の中に脊髄液が溜まって脳を圧迫する水頭症が起こります。二分脊椎ではおよそ半数に水頭症を合併します。

二分脊椎の中でも神経組織が脊椎管に脱出した脊髄髄膜瘤では脊髄障害がみられます出典:東京都医学総合研究所

二分脊椎(神経管閉鎖障害)

胎生期、受精卵の背部に凹みができて、次第に円筒状の神経管になって脊髄から大脳までの中枢神経系が形成される出典:ナースフル

潜在性の二分脊椎とは

のう胞性二分脊椎は露出している脊髄が損傷して下肢のマヒや排尿排便障害、内臓の機能不全などを引き起こします。潜在性の二分脊椎では、皮膚洞という皮膚のくぼみが脊髄に達していると髄膜炎などを起こす原因になります。潜在性の二分脊椎でははじめ症状が見られず、成長してくるにつれて転びやすくなったり、尿を漏らすなどの症状が現れることがあります。

これは、腰の部分で癒着している脊髄が、身長が伸びるにつれて引っ張られて起こる脊髄係留症候群と呼ばれる症状で、治療には癒着している脊髄を引きはがす手術が行われますが、病態によっては後遺症が残るケースもまれにあります。

このような二分脊椎などの神経管閉鎖障害を起こさないためにも、葉酸は妊娠前からきちんと摂っておきたいものです。葉酸は壊れやすく食事からとるのが大変なうえ、妊娠初期にはつわりで食事が取れないこともあって不足しがちです。

まとめ

つわりは、健康な赤ちゃんが育つためにからだがもたらす防衛手段であり、つわりがひどくて食べられないのは人体の理にかなったことなのです。でも、そんなときでも赤ちゃんに必要な葉酸など微量栄養素の補給は欠かせないもの 。つわりと妊娠の関係を良く理解したうえで、必要な栄養素はサプリメントなどを上手に利用したいものですね。

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