201601/27

葉酸の正しい摂り方!妊娠期に神経管障害から赤ちゃんを守るために

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妊娠期に葉酸を正しく摂取する女性

多くの方が毎日何気なく摂っているビタミンのサプリメントですが、これらのビタミンの中に、実は女性にとってとても重要な役割が隠されていることをご存知でしょうか。その大切なビタミンの名は葉酸といい、通常の食事で不足することはないといわれていましたが、外食や加工食品の利用が増えるにつれて不足する人が急増しています。

実は、女性が赤ちゃんを宿した時に葉酸が不足していると、二分脊椎や無脳症といった重い障害を持って生まれてくるリスクが高くなることが知られています。これらの神経管障害の原因は葉酸の欠乏だけではありませんが、葉酸の摂取によって一定のリスクを下げられることが明らかにされています。このため、2000年には厚生労働省が妊娠前後の女性には、食事に加えてサプリメントで葉酸を追加摂取することを勧告しています。

しかし、一般に対する葉酸の必要性についての周知度はいまだに低く、国内の二分脊椎の症例は増え続けているのが現状です。腰の重い国や厚生労働省に代わって、2015年には産婦人科医や脳神経外科医など26人が連名で、「加工食品に葉酸を添加」するよう求める要望書を、日本パン工業会など食品業界6団体に対して送りました。

国の対策が進まない中で、将来生まれて来るであろうわが子を守るためにも、お母さんやお父さんになる前から葉酸についての正しい知識を身につけておきたいものです。また、葉酸は赤ちゃんの健康だけでなく、貧血や心臓病の予防にも大きなかかわりを持っています。女性だけでなく、男性も葉酸について学んでおくことで、健康寿命を延ばすために役立つでしょう。

葉酸はビタミンB?

みなさんはこれまでに葉酸という名前を聞いたことがあるでしょうか?ビタミンといえばビタミンCやビタミンE、ビタミンAなどがよく知られていますが、これらのビタミンと違い、ビタミンBは1種類のビタミンではなく、8種類の化合物からなるビタミン群を指しています。

ビタミンB群はビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビタミンB6(ピリドキシン)、葉酸(B9、B10)、ビタミンB12(コバラミン)、ビオチンで、もともとはひとつの物質として考えられていました。

20世紀の初め、まだ「ビタミン」という名前も概念もなかったころ、ラットを飼育する際に使う配合飼料に牛乳を加えると成長がよくなることから、牛乳の中になんらかの成長を促進させる栄養素が含まれていると考えた学者がいました。

その後、別の学者がこの新しい栄養素について油に溶けるものを脂溶性のA、水に溶けるものを水溶性のBとしたのです。これがのちにビタミンと名付けられたのですが、イギリスのドラモンドという研究者が壊血病の治療効果のあるアスコルビン酸を発見した際に、これをビタミンCとし、それ以降に発見されたビタミンは水溶性、脂溶性を問わずアルファベット順につけていくことを提唱しました。

その後、顕微鏡などの検査機器や検査技術の進歩によって、ビタミンBは化学構造が詳細に調べられるようになり、ビタミンB1、B2、といったB群のビタミンとして単離されていきました。B群ビタミンはB12まで番号が付けられていきましたが、のちにビタミンではないことがわかった物質がいくつか発見され、現在の8種類に落ち着いたのです。

葉酸なのにレバーに多いのはなぜ?

葉酸は化学名を「プテロイルグルタミン酸」といいますが、食品の中には複数の「プテロイルグルタミン酸」が結合した「プテロイルポリグルタミン酸」として存在しています。これが消化吸収を受け、「プテロイルモノグルタミン酸」となることで生体利用率がアップします。

葉酸が最初に発見されたとき、ほうれん草から抽出されたのでラテン語の「葉」を表す「Folium」と、酸を意味する「acid」を組み合わせて葉酸と名付けられました。その名の通り、本来は野菜や果物に含まれています。しかし、私たちが食べる食品の中で最も多く葉酸を含むのは「レバー」なのです。

食品
(100g当たり)
葉酸
(マイクログラム)
食品
(100g当たり)
葉酸
(マイクログラム)
ご飯 3 イチゴ 90
インスタントラーメン 12 温州みかん 24
インスタント焼きそば 13 キウィフルーツ 36
さつまいも 46 あゆ(養殖焼き) 38
フライドポテト 35 まさば(水煮) 14
アーモンド(フライ、味付け) 46 鮭(焼き) 40
ほうれんそう(ゆで) 110 さくらえび 230
ブロッコリー(ゆで) 120 ほたてがい(生) 87
アスパラガス(ゆで) 180 生うに 360
青ピーマン 27 田作り 230
カリフラワー 88 肝臓、子牛(生) 1000
切干だいこん 99 肝臓、にわとり(生) 1300
キムチ 45 卵黄 140
バナナ 25 牛乳 5

出典:葉酸普及研究会

なぜ植物由来の葉酸がレバーに多く含まれるのか?その理由は葉酸の体内動態にあります。食品に含まれる「ポリ型」の葉酸は小腸の粘膜にある酵素でバラバラにされて「モノ型」になってから小腸で吸収されます。そして、さらに別の酵素によってメチル化された「テトラ型」に変換されて血液中に放出されて体内をめぐり、肝臓へと運ばれます。そして肝臓に貯蔵されるのですが、肝臓にはなんと体内にある全葉酸の50%が蓄えられているのです。

葉酸が小腸で吸収される過程を図解で示しています。出典:「健康食品」の安全性・有効性情報

葉酸不足で貧血になる!

葉酸はアミノ酸や核酸を合成する際に、必要な分子を運ぶ触媒として機能しているので、不足するとDNAの分裂や合成に支障を来たします。特に細胞分裂の活発な赤血球の合成に障害が起こり、悪性の貧血を引き起こします。ふつうの貧血は鉄の不足で起こりますが、この場合赤血球は小さくなります。しかし、葉酸不足の貧血は逆に赤血球を巨大化させるので巨赤芽球貧血と呼ばれています。

赤血球を巨大化させる巨赤芽球貧血の写真。出典:Hospitalist 病院総合診療医

2015年版日本人の食事摂取基準によれば、葉酸の一日あたり推奨摂取量は成人男性、成人女性ともに240μgです。いっぽう、厚生労働省の国民健康・栄養調査では男性が1日平均289μg、女性は271μgの葉酸を摂取しており、推奨量を上回っています。しかし、妊娠授乳時には葉酸の要求量が増え、また、多量の飲酒習慣のある人では不足することが知られています。このため、厚生労働省では妊娠・授乳中はサプリメントによる400μgの追加摂取を勧めています。

葉酸不足で起こる恐ろしい神経管閉塞障害

おなかの中の胎児は妊娠3~4週目ごろから神経管の形成が始まり、28週ごろまでに神経管はできあがり閉鎖されます。この間に神経管の成長に障害が起こると、二分脊椎や無脳症といった神経管閉鎖障害になります。これまでの研究によると妊娠の4週間前から妊娠12週までの間に1日400μg以上の葉酸を摂取していいると神経管閉鎖障害が起こるリスクが下がるとされています。

神経管閉鎖障害は、脳や脊髄などの中枢神経系の形成期に起こる障害で、神経管の上部で起こると「無脳症」、下部で起こると二分脊髄を発症します。無脳症の場合は脳がうまく形成されず、死産や流産が多くみられます。二分脊髄は、本来なら神経管の中にあるはずの脊髄が外部に出てしまい、別の組織と癒着したり損傷を受けるなどして下肢の麻痺を起こします。

二分脊髄には開放性の顕在性二分脊髄症と、幼児期にはあまり症状の見られない潜在性二分脊髄症がありますが、顕在性の場合は出産後すぐに外科的手術が必要となり、症例の多くは下肢に障害を残します。潜在性の場合は成長するにつれて、癒着部分が引き伸ばされ下肢の神経が機能低下を起こす脊髄係留症候群の危険があります。

二分脊髄などの神経管閉鎖障害の原因は葉酸の不足によるものだけではありませんが、海外での研究事例等をみると、妊娠前後の葉酸摂取が神経管閉鎖障害のリスクを下げているのは明らかなようです。日本でも厚生労働省が呼びかけをしていますが、具体的な働きかけは十分ではなく、現在のところ神経管閉鎖障害予防には個人レベルでの意識向上が必要です。

葉酸を正しく摂取するために~基本は食品からしっかり摂る

食品中の葉酸はゆで汁に溶けだしたり、調理の際の熱で壊れるなどするので、本来食品に含まれる量の50%程度しか摂取できていません。さらに、食品中の葉酸は「ポリ型」として存在しているため、生体内での利用率はおよそ50%といわれています。つまり、食品から摂る葉酸はもともと食べ物に含まれる量の4分の一くらいしか利用できていないことになります。しかし、すべての人が全面的にサプリメントの葉酸に頼るのは危険でしょう。

葉酸をはじめとするビタミンB群は水溶性のため、体内に蓄積する量は少なく、過剰に摂取しても利用されずに体外へ排出されることが多いと考えられています。ただし、実際には水溶性ビタミンの過剰摂取による健康への悪影響が明らかにされていないだけであり、過剰に摂取しても安全だという確証はありません。特に葉酸はDNAの合成に深くかかわっているため、過剰に摂取しているとがんのリスクが高まるとする研究報告もあります。

葉酸の必要量(200ug)に合う野菜の種類と量。

葉酸を食品からしっかり摂るには、調理で失われないように新鮮な野菜や果物を毎日食べるようにしましょう。また、レバーのほかにも、内臓ごと食べる小魚なども好き嫌いなく食べるようにしたいものです。また、葉酸はビタミンB12がないと吸収や代謝の効率が悪くなるので、ビタミンB12 が欠乏しないように気を付けたいものです、

ビタミンB12の1日推奨量は2.4μgで、欠乏することはほとんどありませんが、肉や魚介類など動物性食品に多く含まれているので、完全な菜食主義だと欠乏症を起こすことがあります。ちなみに、ビタミンB12もレバーに多く含まれています。

食品名 ビタミンB12ug/100g
赤貝(生) 59.2
かき(養殖、生) 28.1
はまぐり(生) 14.0
ほたるいか(生) 62.4
しじみ(生) 47.5
ほっき貝(生) 14.2
うるめいわし(生) 14.6
めざし(生) 47.3
イクラ 17.3
さんま(生) 17.7
にしん(生) 17.4
牛(肝臓・生) 52.8
豚(肝臓・生) 25.2
鳥(肝臓・生) 44.4

出典:「健康食品」の安全性・有効性情報

コウノトリを待っているなら妊娠前からサプリメントで葉酸補給

厚生労働省による日本人の健康栄養調査によれば、食事由来の葉酸摂取量は270μg前後と見積もられていますが、妊娠中や妊娠を望んでいる女性に対しては十分な摂取量とはいえません。いろいろな種類の野菜を350g食べると葉酸が400μg摂取できると考えられていますが、女性は妊娠前から葉酸をサプリメントで補給しておくことが推奨されています。

サプリメントの葉酸は「モノ型」なので生体内での利用効率が高く、85%と見積もられています。食事由来の葉酸が270μgだとすると、体内で利用されるのは60~70μg程度で、これにサプリメントからの摂取量400μg×0.85=340μgを加えると約400μgとなります。この値が女性にとって葉酸の黄金律となるのです。

まとめ

埼玉県坂戸市では地元の女子栄養大学と共同で、市民に葉酸を1日400μg摂ってもらう、という運動を進めています。地元の農家や企業と共に、葉酸入りのパンや卵、ドレッシングなどが商品化されていますが、地元の農産物を使用した葉酸たっぷりの料理を提供する地産地消レストランも人気を博しているようです。

なかでも特筆すべきは昭和36年創業の居酒屋さん「柳屋」のレバニラ炒め。レバーとニラには葉酸がたっぷり含まれているので、一皿でなんと785μgもの葉酸が摂れてしまいます。これで350円とは驚異的な安さですね。家庭でも、レバニラ炒めは絶好の料理で、レバー、ニラ、モヤシにはいずれも葉酸が豊富に含まれています。

葉酸たっぷりのレバニラ炒め。出典:さかど「葉酸おかわりブログ」

葉酸は胎児の神経管閉鎖障害だけでなく、貧血予防、高ホモシステイン血症による動脈硬化や認知症の予防にも役立つとされています。妊娠期の女性は食品+サプリメントで、それ以外の方はサプリメントではなく、野菜やレバーなどの食材から葉酸を十分に摂っていただきたいものですね。

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