
アトピー性皮膚炎の症状に悩める人は、食事内容・日常生活に気を付けたり、専門医の治療を受けたり、しっかりケアをしているという人も多いでしょう。しかし、それでも改善しない、悪化したりするという場合、普段のシャンプーやリンスのせいかもしれません。
シャンプーそのものの成分による刺激だけでなく、洗髪時に垂れたシャンプー液、さらに流した時に落としきれなかったリンス剤が、アトピー症状を引き起こしていることもあるのです。そこで、アトピー性皮膚炎を改善・悪化させないための「シャンプー・リンスの選び方」「正しいシャンプーの方法」を、症状の度合いに分けてご紹介します。ぜひ、今日から試してみて下さい。
いつものシャンプー・リンス アトピー悪化の要因かも!?
アトピー性皮膚炎が発症・悪化する原因には、食物や花粉などのアレルギー反応を介するものと、アレルギー反応を介さず、直接皮膚に刺激を与えて皮膚症状の原因となるものがあります。ある調査によると、重症の成人型アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚症状を悪くしていた原因は次のようなものがありました。
アレルギー的因子 | 非アレルギー的因子 |
食べ物 | 汗 |
ダニ・ハウスダスト | 乾燥 |
細菌・真菌 | 科学的刺激 ・スキンケア製品 ・その他の化粧品 外用薬 |
花粉 | |
外用薬 | 物理的刺激 |
スキンケア製品 | |
化粧品等 | ストレス |
非アレルギー的因子の中の化学的刺激には、洗剤・石鹸類(シャンプー、リンス、ボディソープ、固形石鹸など)が悪化因子として働く割合が多くあります。洗剤類は、その強い洗浄力で皮膚から皮脂を流し去り、皮膚をかさかさにしてしまうと同時に、皮膚に刺激を与えて、湿疹を誘発してしまうのです。ただ、ほとんどのケースは、使っている製品を別の製品に取り替えることで、皮膚症状が大きく改善されるでしょう。
悪化因子を早く見つけるには?
アトピー性皮膚炎の悪化因子は非常に身近なものが多く、なかなか気付かれないことが特徴です。では、どうすれば気付くことができるのでしょうか。
洗剤・石鹸、へアケア化粧品、化粧品、外用薬、入浴品、衣類などは、3~5日使用して、そのときの①皮膚のかさつき、②かゆみ、③赤みの3つの症状.の悪化がないかどうかをチェックします。
3症状のいずれかが、使用開始以前より悪化する場合は、その製品を使わないようにします。
別の製品に取り替え、症状が減少する製品を見つけ出したら、以後はそれを使用しましょう。皮膚は季節によっても状態が変化し、良いと思って使っているものも、季節が変わると(特に夏~冬)皮膚に合わなくなることがあるので、常にチェックが必要です。
悪化因子のチェックポイント
- 皮膚のかさつき
- 皮膚が赤くなる
- 皮膚がかゆくなる
3~5日を使用した後、①~③のいずれかの症状の増減を確認する。
シャンプー・リンス・石鹸 合わなければ取り替えよう!
スッキリとした洗い上がりを好む人が多いためか、現在のシャンプーや石鹸は油分を取り除くカが非常に強くなっています。シャンプーや石鹸が悪化因子になっていると考えられるケースは非常に多いので、使用しているシャンプーを別の製品に取り替えたり、シャンプーをやめて石鹸にしたりといったことを試してみてください。
シャンプーで頭を洗うのを休むと、髪がベタベタになるということがあります。これは、毎日シャンプーで髪や頭皮の油分が洗い流されるので、頭皮が「もっとたくさん皮脂を作らないと!」といって頑張っているから。そのシャンプーを中止して、普通の石鹸か石鹸シャンプーで洗髪を続けると、今度は「普通に皮脂を作ればOK」と頭皮が学習するので、2~3週間でベタベタ感が取れていきます。
髪の長い女性にとって、保湿力の高い仕様のシャンプー・リンスの使用をやめることは簡単なことではありませんが、シャンプーが皮膚に悪さをしていると考えられるときは、すぐさまシャンプーを中止し、普通の石鹸か石鹸シャンプーで髪を洗うことをおススメします。
シャンプーで洗いすぎると髪の毛の油分が抜け、切れ毛が発生します。それを補うためにリンス・コンディショナーが必要となりますが、このリンスも洗剤の一種。シャンプー・リンスが髪に残っていると、汗をかいたときに一緒に流れ出して、頚部、上背部の皮膚を刺激してしまうのです。
どんなシャンプーが身体に合うかは、人によって色々です。皮膚の状態は人によって異なるので、ある人はAという製品で皮膚の刺激が起こり、Bの製品に切り替えると皮膚症状が改善に向かい、別の人では、製品Bで刺激があり、製品Aに切り替えると良くなったということがしばしばあるからです。
どのアイテムが良いかは、結局、自分自身で1つ1つ検討し、自分に合うものを探すしかありません。商品の値段は、高いものから安いものまで様々ですが、高いものほど刺激が少ないというワケでもないので、値段に左右されないようにしましょう。
シャンプーの使い過ぎは「アトピー性皮膚炎予備軍」に!
入浴といっても湯船に浸からず、シャワーだけという人も多いのではないでしょうか。また、身体は割と適当に石鹸で洗う程度だが、頭は毎日しっかりシャンプーをするという人が、少なくないようです。毎日シャンプーを欠かさない上に、立ったままシャワーで頭を洗うので、シャンプーが全身に流れて、身体の油分を取り、身体の皮膚を刺激してしまいます。
このような入浴習慣が一般的になっているせいもあり、アトピーではないものの皮膚の乾燥を自覚している人(特に若年層)が増えてきています。この人たちも「アトピー性皮膚炎予備群」です。アトピー性皮膚炎予備群の人の皮膚に、さらに他の皮膚刺激物が加わると、本格的なアトピー性皮膚炎に発展することがあるので、油断は禁物。
シャンプー・リンス・石鹸・ボディソープだけでなく、アウトバストリートメントやスタイリング剤など、へアケア製品にも同様の注意を払わなければいけません。また、濡れた髪の毛をドライヤーの熱風で乾燥させることによって、おでこの皮膚の炎症が強くなることにも注意が必要です。
まるでアトピーの症状 「シャンプー皮膚炎」に注意!
アトピー性皮膚炎と間違われがちな肌症状で、シャンプーの脱脂力による皮膚の乾燥と、シャンプーの成分そのものの弱い刺激が引き起していると考えられるものに、「シャンプー皮膚炎」と呼ばれるものがあります。
「シャンプー皮膚炎」は、シャンプーが流れたところに皮膚症状が出てくるのが特徴で、成人型アトピー性皮膚炎と見分けがつかない状態が出来上がります。頭の中に、小さなフケが付き、強い痛みをきたし、髪の毛の生え際、特におでこと首の部分には赤くなった湿疹が見られます。顔、首の皮膚は乾燥してかさかさとなり、身体も乾燥して荒れ、あちこちに引っかき傷と小さな赤い丘疹がばら撒かれます。
症状の現れる部位は、シャンプーを前後どちらに流すかによって異なり、
- 前に流す人
下腹部から大腿にわたって、引っかき傷と丘疹が見られる。 - 後方に流す人
背中の皮膚が乾燥し、かさかさとなりお尻に丘疹が集まる。時間が経つと下腹部、お尻に色素沈着をきたす。
また、どちらも、流れたシャンプーかたまりやすい肘、膝のくぼみにはアトピー性皮膚炎と同じゴリゴリした皮膚病変が形成されます。アトピーになった経験がないのに、皮膚アレルギーになった場合は、こちらの可能性も。自己診断だけでなく、専門医に診てもらいましょう。
軽度のアトピー性皮膚炎なら 石けんシャンプーを使ってもOK!
石鹸やシャンプー剤などは、敏感肌用のものもありますが、炎症がひどくなければ普通のものでもOK!刺激が心配な場合は、強力な洗浄成分である合成界面活性剤の入っていない石鹸シャンプーがおススメ。しかし、症状が悪化したときは直ちに使用をやめましょう。
合成界面活性剤が含まれている石けんシャンプーはNG
石鹸シャンプーという名称でも、実はは天然系の合成界面活性剤を使っているものも少なくありません。たとえば、「アミノ酸石けん」や「アミノ酸石けんシャンプー」は、アミノ酸から合成した天然系合成界面活性剤が含まれている場合が多いのです。成分表示を確かめてから購入してください。
また、コンディショナーやリンスは、アルカリ性の石けんシャンプーを中和させるために、クエン酸などを使用した酸性のものを使いましょう。症状が軽度であっても、ドライヤーを避けてください。
参考:シャボン玉 無添加せっけんシャンプー/シャボン玉石けん
出典:Amazon
シャボン玉石けんは、原料に牛脂やパーム油、パーム核油、米ぬか油などの天然油脂を使用し、香料、着色料、酸化防止剤、合成界面活性剤などの化学物質や合成添加物を使用していない。女性をはじめ、子供から高齢者まで、敏感肌や乾燥肌の人にピッタリ。
参考:無添加せっけん専用リンス/ミヨシ石鹸
出典:Amazon
石けんシャンプーでの洗髪後は、きしみを和らげる弱酸性のクエン酸リンスで洗い上がりスッキリ。香料着色料防腐剤はもちろん、合成界面活性剤のコンディショニング剤や保湿剤なども一切加えられていない。薄めて使うタイプで経済的。(300倍に薄めて使うタイプ)
シャンプーやリンスは、殺菌成分が入っているものは刺激があるので避けた方が良いでしょう。保湿成分が入っているものもありますが、皮膚に残る成分にかぶれる場合もあります。なるべく石鹸成分だけのものを選んだほうが安心です。敏感肌用の石鹸にも色々種類があるので、自分で使い心地の良いものを選んでください。
洗った後は、よく流すことも忘れずに。石鹸やシャンプー剤が残っていると、それが刺激となって症状が悪化してしまいます。時間をかけてよく流すことがポイント。額や生え際の炎症が強い人は、シャンプー剤が合わずに、かぶれている可能性もあります。そのような場合は、違う種類のものに替えてみるのもよいかもしれません。
中程度~重度のアトピー性皮膚炎には お湯だけ洗髪を!
一般的なシャンプーやリンス、コンディショナーには、強力な洗浄成分である合成界面活性剤が25~27%配合されており、台所用合成洗剤と同じくらいの高い配合率。しかも、頭皮は合成界面活性剤の吸収率が高いうえ、髪を洗う際などに爪で傷がつきやすいため、合成界面活性剤が皮膚の内部に侵入しやすい部位なのです。
つまり、シャンプーは、アトピー性皮膚炎の症状に一番影響が出やすい合成洗剤といえます。中程度~重度の症状がある人は、合成界面活性剤の配合されたシャンプーやコンディショナーは絶対に使わないこと。また、スタイリング剤もおススメできません。
髪を洗うときは、お湯で洗い流すだけにしてください。洗う前に髪をやさしくブラッシングしておくと、汚れが落ちやすくなります。その後、38~40℃のお湯で頭皮と髪を十分に湿らせてから、頭皮は指でやさしくマッサージするように、髪は手ぐしでやさしくほぐすように洗い流しましょう。
お湯だけでの洗髪は、最初の数日間は髪がごわついたり、頭皮がかゆく感じることがあります。これは、今まで合成洗剤を使用し続けたために頭皮の皮脂膜がはがされ、保湿機能が失われて乾燥しているため。お湯だけの洗髪法を続けていくうちに、頭皮は皮脂を出せるようになり、次第に髪もしっとりして気にならなくなるハズです。
また、ドライヤーは髪だけでなく頭皮も乾燥させるので使わず、タオルで入念に水分を拭き取りましよう。あとは自然乾燥させてください。
シャンプーを使わない お湯だけ洗髪法
髪をやさしくブラッシングする
- 38~40℃のお湯で、髪と頭皮を充分に湿らせる。
髪は手ぐしでほぐすようにして洗う、頭皮は指の腹を使ってやさしくマッサージするように。 - お湯で洗い流します
タオルでやさしく水分を拭き取る。できるだけ入念に。ドライヤーを使うと髪も頭皮も乾燥するので、水分を拭き取ったら自然乾燥させる。
まとめ
身体にだけアトピー性皮膚炎の症状があるときは、ボディケアは念入りにするけど、ヘアケアはそれほどでなかったりします。身体のアトピー症状も、シャンプーやリンスが原因の可能性も大。これからはぜひ、ボディケア同様、ヘアケアにも注目してくださいね。
どんな方法においても症状が悪化した場合は、自分で治そうとせず、すぐに専門医にかかりましょう。