201601/15

知らないと危ない!カルシウム摂取量の重要性と危険性

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健康への補助としてカルシウムを正しく摂取しよう。

地球の重力にさからって私たちのからだを支えている骨の成分、カルシウム。カルシウムが不足すると骨がスカスカになる骨粗しょう症になることはよく知られています。でも、実は骨というのは、からだを支えることよりもカルシウムを貯蔵しておくためにこそ必要な器官なのです。

私たちの心臓や筋肉、臓器を動かしたり、心の健康にもカルシウムは欠かせません。そんな重要なカルシウムですから、サプリメントで補給している人もたくさんいることでしょう。特に女性は、中高年になるとホルモンバランスの変化から骨粗しょう症になりやすいですし、若い女性でもダイエットの影響でカルシウム不足となり、骨粗しょう症になる人が増えています。

そんな重要なカルシウムですが、摂取の仕方によっては心血管疾患による死亡率を高める、とする研究報告も多くみられます。私たちにとってとても重要な栄養素であり、でも一歩間違えると病気のリスクを高めてしまうかもしれないカルシウム。

なぜカルシウムは私たち必要なのか、正しい摂取の仕方はどうすればよいのか、知っておいて損はないはずですから、じっくり読んでみてください。

進化する魚、体内に海を宿す

地球上に生命が生まれたのは今から約38億年前の海でした。生命の誕生には種々のミネラルを豊富に持つ海の存在が不可欠だったからです。その後、生命は母なる海に育まれ、単細胞生物からゆっくりと時間をかけて、少しずつ複雑な生物へと進化していきました。そして今から3億6千万年前、ついに私たちの祖先は陸上への進出を果たしました。

私たち陸上生物の祖先は古代の魚類でしたが、太古の海にはオウムガイという魚の天敵が我が物顔で泳ぎ回り、魚たちを捕食していたのです。凶暴なオウムガイから逃れるため、魚たちは川を目指しました。当時の川には生物がほとんど棲んでおらず、魚たちにとっては絶好の新天地でした。

先史時代の巨大な生物たち出典:カラパイア

しかし、川は海と違って塩分濃度が低いため、淡水が流入して細胞が破裂してしまう危険をはらんでいます。また、川には生命を維持するためのさまざまなミネラル分が圧倒的に不足しています。そこで魚たちは腎臓という強力なポンプを発達させて浸透圧の問題を克服しました。そして、もう一つの問題であるミネラルの供給については、大きな背骨を身につけることで解決したのです。

骨にはカルシウムのほか、マグネシウム、リン、亜鉛など海水に含まれるミネラルがすべて含まれています。私たちの祖先は、川へと進出し骨を発達させたことで、母なる海を体内に宿すことに成功したのです。魚たちの一部は海に戻り、オウムガイを駆逐して自分たちの住処を取り戻しましたが、一部の魚たちはさらに肺を発達させて陸を目指しました。私たちの骨には長い生命の進化の歴史が刻みこまれているのです。

意外と知られていないカルシウムの働き

ヒトの体内に存在するカルシウムは体重の役1.7%といわれ、その99%が骨や歯に貯蔵されており、残りのわずか1%が細胞内や血液、リンパ液の中にあってさまざまな機能を果たしています。しかし、このわずか1%のカルシウムがヒトの生理機能を司っているといっても過言ではありません。

たとえば、カルシウムはカルシウムイオンとして細胞の内と外にあり、筋肉の収縮と弛緩をコントロールしています。心臓が規則正しく鼓動を繰り返す動きもカルシウムがあってこそ、もしもカルシウムがなかったら心臓はただちに動きを止めてしまいます。ほかにも、細胞の分裂や神経の情報伝達、免疫機能や血液の凝固作用など様々な生理機能に関わっています。

生きていく為に不可欠なカルシウムの働き出典:第一薬品工業

カルシウムがきちんと働くためには他のミネラルとのバランスが保たれていなければなりません。細胞内外でのカルシウム濃度はあらかじめ決められており、その濃度は一定に保たれていなければならないのです。そのため、血液中のカルシウム濃度が低下すると、のどぼとけの下にある副甲状腺から「副甲状腺ホルモン」が分泌されます。

副甲状腺ホルモンは破骨細胞を刺激して、骨を溶かし、血液中にカルシウムを放出させてカルシウム濃度を一定に保つ働きを持っています。このように、副甲状腺はいわばカルシウム濃度センサーのような役割を果たしていますが、実は魚のエラにも同様にカルシウム濃度をコントロールする働きがあります。研究者によると、副甲状腺は進化の過程でエラが変化したものだということです。

血中のカルシウム濃度を一定に保つことは生命を維持する上で大変重要です出典:ジャビオン

カルシウム・パラドックス

体内のカルシウムは尿などから排泄されていくため、不足分は食事から補う必要があります。カルシウムの最低必要量は1日に700㎎といわれていますが、食事からのカルシウム摂取が不足すると、副甲状腺の働きにより骨が溶かされ、血液中にカルシウムが放出されます。

しかし、常に食事からのカルシウムが不足している状態では、骨のカルシウムがどんどん減っていき、骨粗しょう症になってしまいます。このとき、骨からのカルシウムが溶け出しすぎて血液中のカルシウム濃度が高くなることがあります。体全体のカルシウムが足りていないのに血液中のカルシウムが増えすぎる、これがカルシウム・パラドックスです。

増えすぎた血液中のカルシウムは血管や細胞など、からだのいたるところに沈着して石灰化します。関節の軟骨で石灰化すれば変形性関節症に、血管の内壁に付着すれば血管は弾力を失い動脈硬化に、また、石灰化したカルシウム沈着のせいで血管の内側が狭くなると同時に血管自体を収縮させて高血圧のリスクを高めます。カルシウムパラドックスは、ほかにも認知症やアレルギーの原因になると考えられています。

恐ろしい心臓の石灰化

このようにカルシウム・パラドックスは体のいたるところに石灰化を招き、ときには生命の危機に及ぶような病気を発症させます。その典型的な例が心臓にある冠動脈の石灰化です。多くの心筋梗塞や狭心症の原因が冠動脈の石灰化によるものですが、特に無症状のまま石灰化が進み、気づいた時には冠動脈全体が骨のように硬くなってしまうのが、高度石灰化、「心臓の骨化」と呼ばれる症状です。

骨化とは心臓が骨のような状態になってしまうこと。骨のようにガチガチに骨化して将来的に心筋梗塞を起こす原因になると言われています。出典:テレメモ みんなの家庭の医学2015年2月17日放送分より

こうなると心筋梗塞や心不全での死亡率が10倍以上にもなるといわれています。こうならないためにはカルシウムの十分な摂取が必要で、手軽にカルシウムを補給できるサプリメントが役立つと思うのですが…。実はサプリメントによるカルシウム摂取が、かえって心筋梗塞など心臓病での死亡率を高める、とする研究報告が多数あるのです。

これらの報告の多くは長期にわたる疫学調査が多く、カルシウムのサプリメントが心臓病の原因となるメカニズムまでは明らかにされておらず、医師や研究者の間でも賛否の分かれるところです。しかし、サプリメントで摂取するカルシウムは食事由来とは違い、一度に多くの量が吸収され血液中に放出されます。

このことがカルシウム・パラドックスと同様の状況を作り出すことになり、血液中のカルシウム濃度を高めて石灰化を促進すると推定されます。しかし、骨粗しょう症をはじめ、カルシウム不足に大きな病気のリスクがあることは確実で、サプリメントは有効な予防手段でもあるのです。いったい、どのようにすればリスクを抑えてカルシウムを摂ることができるのでしょうか。

摂るべき栄養素はカルシウムだけじゃない

多くの研究ではサプリメントと同じくらいの量でも、食事から摂取するカルシウムは安全だとしています。なぜなら、純粋にカルシウムだけを吸収するサプリメントと違い、さまざまな栄養素を含む食品からは時間をかけてゆっくり吸収されるからです。

カルシウムの多い食品は乳製品や桜エビや小女子など丸ごと食べる魚介類が知られていますが、ほかにもモロヘイヤや大根の葉っぱなど青菜類にも比較的多く含まれています。さらにカルシウムだけではなく、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも十分に摂るべき必要があります。

ビタミンDはカルシウムの吸収を高めるだけでなく、カルシウムが尿として排泄されるのを抑制する働きもあります。ビタミンDは皮膚にあるコレステロールが紫外線を浴びることで生成されますが、手のひらや顔などへ1回につき30分、週に2回ほどの日光浴で十分といわれています。しかし、日照の少ない季節や地域では、食事からもビタミンDを摂取しないとすぐに不足してしまいます。

ビタミンDは魚の肝臓やシイタケに多く含まれていますが、日光にあたる時間が短い、食事からの摂取が少ない、と感じるときにはサプリメントを利用するのもいいでしょう。ビタミンDはカルシウムの吸収だけでなく、高血圧や免疫機能、認知症の予防や冬季うつなどにも効果があるといわれています。1日の摂取目安量は5.5μg、上限値は100μgとされており、比較的安全性の高いビタミンではありますが、過剰摂取すると石灰化を促進するので気をつけましょう。

「太陽のビタミン」と呼ばれ、カルシウムの吸着をサポートするビタミンとして知られていますが、近年ではさまざまな健康リスクを遠ざける成分として注目を集めています。出典:DHC

石灰化を防ぐために

カルシウムは摂りすぎても不足しても石灰化を招いてしまうため、適量摂取を心がけたい栄養素ですが、カルシウムの沈着を防ぐには以下の点にも気を付ける必要があります。

からだのpHを酸性に傾けない

食品は含まれるミネラルの種類によって酸性食品とアルカリ性食品とに分けられます。

酸性食品

塩素、リン、硫黄  肉や卵、砂糖、炭水化物など

アルカリ性食品

ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、野菜、果物、海藻、キノコなど

酸性の食品を大量に摂取すると食品由来のミネラルが血液中に放出されます。たとえば血液中にリンが多くなると、からだは恒常性を保とうとして、リンと拮抗するカルシウムを動員、中和しようとします。すると骨からのカルシウム溶出量が増え、カルシウムの血中濃度も高くなってしまいます。酸性食品の摂りすぎに気をつけましょう。

血流を停滞させない

血流が悪くなる場所にカルシウムが沈着しやすくなるので、血流を正常に保つことも石灰化の予防には重要なポイントです。特に長時間同じ姿勢でいたり、座りっぱなしでいると血流が滞り、カルシウムが沈着する原因となります。デスクワークなどでは時々立ち上がってストレッチをするなどするとよいでしょう。血流を良くしてくれるビタミンEやEPAなどを摂るのもおすすめです。

バランスの乱れによっておこる様々なトラブルの緩和や、体の中のめぐりをサポートするためにビタミンEが必要です。出典:ファンケル

血中中性脂肪の上昇を抑えるスーパーフィッシュオイル出典:ネイチャーメイド

ビタミンKを摂ろう

ビタミンKは血液凝固に関係するビタミンとして知られていますが、最近、骨粗しょう症や動脈硬化に対する効果が注目を集めています。

骨代謝とビタミンK

ビタミンKは骨芽細胞から分泌される、骨形成に必要なたんぱく質を活性させます。このたんぱく質を活性化させるためには通常より多くのビタミンKが必要とされます。納豆が骨粗しょう症によいといわれるのは、大豆に含まれるイソフラボンのほかにビタミンKが豊富に含まれるため、骨形成促進に役立つため、と考えられています。

動脈硬化とビタミンK

ビタミンKは石灰化に関係するたんぱく質の酸化還元反応を促進する補酵素として働き、動脈の石灰化を抑制しています。研究によれば、ビタミンKの摂取量と心疾患による死亡率には関連があり、摂取量の多いグループは少ないグループに比べ、心疾患による死亡率が約半数であったとしています。

ビタミンKにはK1~K5まで5種類ありますが、ヒトに有用なのはK1とK2で、K1は植物に、K2は動物性の食品と納豆に多く含まれます。しかし、植物由来のビタミンKは吸収されにくいため、サプリメントや納豆からの摂取が推奨されます。

K1が緑黄色野菜に多く含まれているのに対し、K2は発酵食品やカラダの腸内細菌によっても作られているのです。出典:ウィダー プロテインバイブル

*注意*

心臓病の薬であるワーファリン(ワルファリン)を服用されている方はビタミンKを摂取してはいけません。薬の効果を弱めてしまう恐れがあります。

まとめ

私たちの体の中にある母なる海 ― それが骨でありカルシウムでもあるのです。カルシウムは不足しても摂りすぎても健康を損ねてしまうミネラルであり、だからこそ常に一定の濃度が保たれているのです。

カルシウムは食事から摂るのが原則ですが、サプリメントを利用するなら次のことに気をつけてみてください。

  • 動脈硬化や心疾患のリスクのある人は利用を控える
  • 一度に大量摂らず、1日に何回かに分けて少しずつ摂る
  • カルシウムは控えめにしてマグネシウム、ビタミンD、ビタミンKと一緒に摂る

カルシウムに限らず、栄養素は「過不足なくバランスよく」が原則です。誰のためでもない、あなた自身の健康のために。

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